娘と生きる不登校な時間

娘から笑顔が消えた。いじめ、不登校、精神崩壊、転校、リストカット、性犯罪。生きる意味に疑問をもつ娘に、自信と笑顔を与えたい。二人三脚で難関大学受験に挑むシングルマザーの記録。

┝04.見えた学級崩壊の中心の目

学級崩壊の現場

 

 

シングルマザー愛

校長室で保護していても危険なんです。

学校を休んでもらってもいいですよ。

 

それは

 

しばらく来ないでいてもらえた方が

助かります。

 

という意味に取れました。

 

先生方も大変なんでしょう。

これ以上騒ぎを大きくしたくない、

主犯格の男の子の気持ちを

逆撫でするようなことは

極力、避けたいのかもしれません。

 

私だって大事な娘を

危険に晒すような事はしたくありません。

 

誰にも守ってもらえないような場所に

一日中泣いて過ごさなければならない

そんな場所に

 

娘を行かせたくなんかありません。

 

でも、私はミノリの母親です。

ミノリがそれでも

『行く』と言うのなら

 

行きましょうとも

私も一緒に!

 

それが私にできる

とりあえず今すぐにできる

ミノリを守る方法だと思いました。

 

いったい何が起こっているのか

いったいその男の子は

どんな顔をしているのか

いったい先生達は何をしているのか

 

ミノリが置かれた環境を

見ておかなければならないと思いました。

 

この期に及んでミノリは

私に気を遣います。

『ママ、仕事は大丈夫?』

 

正直、シングルで二人を育てるお金事情は

かなりキツいです。

特にミノリが受験のこの年は

働いても働いても足りなくて

 

あー電気が止まりそう

あー携帯が止まりそう

あれ支払えるかな?これ支払えるかな?

そんなギリギリの生活だったので

 

いつまで続くかわからない

思い付きの行動で

どれだけ仕事を休む事になるんだろうか

と不安ではありました。

 

でもミノリにそれを

悟られてはいけません。

 

仕事なんて後回し。

全然余裕で後回し。

そう笑顔で答える私でした。

 

愛情求めるためのフリ

翌朝

私はミノリと登校しました。

 

通学路の途中で

クラスメイトの女の子と

そのお母さんが

一緒に登校しているのを見かけました。

 

あの子もいじめられてたりするの?

 

そうミノリに聞くと

 

その子はいつも決まって

ミノリの真似ばかりをする子で

 

ミノリが校長室に

保護されているのが羨ましくて

自分もその立場になりたくて

いじめられているフリをしていると…。

 

騒ぎになると

誰よりも先に大声で泣き

怖い怖いと震えて見せる。

それでも本当にいじめられるのは嫌なので

強い子に上手に取り入るを知っている、と。

 

ハァ〜。

ため息が出ました。

 

ミノリの話が本当だとしたら

お家でも被害者のフリをして

それを信じて心配したお母さんは

私と同じように

一緒に登校することにしたんだろうな。

 

フリじゃなければいい・・・

いや、フリの方がいいはずだ。

うーん、子育てって

難しいな〜と思いました。

 

真実を示す表情と真実から目を逸らす昔話

ミノリと校門をくぐり

私たちはそのまま

校長室へ向かいました。

 

保護して下さっていたお礼を伝え

実際の状況をきちんと

お聞きしたかったからです。

 

ドアをノックして校長室へ入りました。

 

するとそこには

先程の女の子とお母さんが

校長先生と向かい合って

ソファに座っているではありませんか。

 

先を越されてしまった。

そう思って退室しようとした時

 

その女の子とミノリの

表情が全く違うことに気付きました。

 

女の子は校長室にいることで

テンションが上がってしまったのか

お母さんがいることが嬉しいのか

エヘヘという笑顔で可愛らしくはにかみ

ソファの上で落ち着きなく

モゾモゾと体を揺らしています。

 

その姿を目で追うこともなく

伏し目がちで無言で佇んでいるミノリ。

 

この差こそが現実なのだと

私は一瞬で悟りました。

 

女の子のお母さんは

途中で入ってきた私たちに

気付きながらも

気にすることなく

校長先生との会話を続けました。

 

だからもう少し先生方に

しっかりと見ておいてもらわないと

何かあってからでは困ります!

毎日泣いているんですよ?

 

校長先生は私たちに目配せし

ここに座りなさいとばかりに

隣のソファを手で示しながら

 

笑顔でゆっくりと頷きつつ

『昔はねぇ〜』なんていう

平和な昔話を始めました。

 

居心地が悪そうなミノリ。

 

私は出直すと伝え校長室を出て

腑に落ちない気持ちのまま

ミノリの教室へと向かいました。

 

学級崩壊の現場に潜む殺意の目 

教室の前まで来ると

何名かの子が私に気付き

誰だ、誰だというような空気になりました。

 

ミノリはササッと教室の中へ入り

自分の席に着きました。

 

私はミノリがギリギリ見える

教室の後の窓際に立ち

子ども達ひとりひとりに

微笑みまじりに目を配りました。

その微笑みのなかに

 

何かする子がいたら

私が許さないから!

 

という強いオーラが

大量に出ていたと思います。

 

教室内はザワザワしているものの

よくある登校時の状況に見えました。

ミノリは振り向くことはなく

静かに座り、うつむいていました。

 

チャイムが鳴り

担任の先生が歩いて来ました。

そして私に気付き、小さく会釈し

教室に入っていきました。

 

隣のクラスからは私語が消え

起立、礼、という言葉が聞こえてきます。

 

ミノリのクラスはというと

 

先生が教壇に立とうが

声を出そうが

まるで気付かないかのように

ほとんどの子ども達が

ザワザワ、ガタガタと

変わらず立ち歩いています。

 

そこへもう一人、男の先生が入りました。

ヘルプ要員だなと分かりました。

 

担任の先生は状況に構わず

やるべき事を淡々とこなし

ヘルプの先生が注意する役目のようでした。

 

ただ、ヘルプの先生の注意の仕方も

小さな子どもに言うかのようで

全く効果がありません。

すっかりなめられて

「はいはい、わかりましたよぉ〜」

なんて言われながら

やっと一人座らせたら

また一人立ち歩く・・・

 

そんな繰り返しでした

 

 

、ヘルプの先生に対する

そんな返しは

まだまだ甘いものでした。

 

それが分かったのは

担任の先生が

ある一人の男の子に

直接声をかけたときでした。

 

その子の肩を遠慮がちに指先で

トントンと触り

『◯◯さん、座りな…』

 

そう言った瞬間

 

振り返り

下から先生を睨んだその子の

 

・・・

 

それはまるで殺意を醸しだすような

とても鋭く怖い目でした。

 

あんな目で睨まれたら

大人だって怖いかも、そう思いました。

 

とにかく教室内はずっと

ザワザワ、ガチャガチャと

とてもうるさく落ち着かない状況で

 

ただ、大人たちの目線だけが

緊張感に張り詰めた見えない空気を

遠慮がちに漂わせていました。

 

プライドの高いミノリは

私を振り返る事もなく

時間が過ぎるのを待っているかのような

静かな表情で

じっと座っていました。

 

休み時間の時

さっき先生を睨み返した男の子が

私のところへ寄って来て

顔を覗き込むようにして言いました。

 

「何しに来てんの〜?監視〜?」

 

ニヤリと笑い去って行く

その何とも子ども気ない表情に

言い返す言葉が浮かばず

彼の襟足を掴んでやりたい衝動に駆られ

手にギュッと力が入りました。

 

でも、生まれながらに平和主義者の私には

争ったり、人に強い態度で接する能力は

全く備わっておらず

それどころか

さっき見たあの鋭い目を思い出すと

まだ小学生の子どもだと分かっていても

正直、怖いとさえ思ってしまいました。

 

いや、もちろん!

万が一ミノリに何かあれば

そんなことは関係なく

この身を捨てて戦うことに

一寸の迷いもありませんが。 

 

成長途中の私たち

結局この日は

ミノリに直接的な被害はありませんでしたが

それも私が一緒に登校したからかもしれないし

何はともあれこの学級への対応が

一筋縄ではいかない状況になっていることは

理解できました。

 

担任の先生は憔悴していて

顔色が悪く、そのどこにも

教職への夢も希望も志も

感じることができませんでした。

 

完全に生徒になめられてしまった先生

毎朝起きて、学校に出勤することが

苦痛でならないでしょう。

スムーズに生徒を指導している先生方と

同じ職員室という空間にいるのは

かなり居心地悪いはず。

毎日のように

父兄からの問い合わせやクレーム等の

対応に追われているかもしれません。

 

それもこれも、不運なことに

受け持ったクラスの中に

問題の子がいてしまっただけ。

 

もちろん教師としての資質は

多少なりとも必要かもしれないけれど

そこに無責任な気持ちがあったなら

とっくに辞職しているだろうし

毎日どんな思いで

この場所に立ち続けているのだろうと思うと

 

この期に及んで

担任の先生のメンタルまで心配で

気の毒にすら思えてきました。

 

 学校の体制とか、教育方針とか

先生の度量とか、経験とか

そんなものに

子どもを変えるほどの力はないと

私は思います。

 

子どもの人格を育てるのは

やっぱり幼い頃から育ててきた親や

周りの大人の、その姿だと思うし

 

間違った方向に歩み始めた子の

些細な言動

正しくとも生きづらさを感じている子の

ギリギリの立ち姿

 

誰よりも早く気付いてあげられるのは

学校や教師ではなく

一番近くで見守っているはずの

親であり、大人たちだと思います。

 

でも

思春期を迎えた子どもたちは

上手に、本当に上手に

それを隠しますよね。

 

私自身もミノリのことを

こんなに大切に想っているにもかかわらず

全然気付いてあげられませんでした。

 

だけどそれを

悔やむことに時間を割いたり

誰かにその責任を

なすりつけたりしたところで

何の問題解決にも繋がらない。

 

私たち親だって

学び途中の不完全な人間で

今もまだ成長途中なのだから

先回りして全てに気付き

上手くやり過ごすことなんて

出来るはずがありません。

 

だから

気付けたもうそこからは

 

気付けていなかったことを悔やむより

気付いてあげられた事に

まずは胸を張り

 

ごめんねと思うと同時に

『生きていてくれてありがとう』

という想いを忘れずに

 

目の前のひとつひとつの現実に

向き合っていくべきだと思います。

 

 

この学級崩壊といじめにより

私はミノリと

強いロープで結び直し

二人三脚で歩き始めました。

 

最初の一歩の

【一緒に学校へ行く】

からの帰り道

私たちはそのロープを解くことなく

ゆっくり一緒に自宅へ向かいました。

 

途中、あの校長室の女の子が

友達とはしゃぎながら

笑顔で帰っているのを見かけました。

そこに

お母さんの姿はありませんでした。

 

そのお母さんと

再び顔を合わせることになったのは

 

翌日の夜、学校で開かれた

 

緊急保護者会の場でした。

 

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ここからの事は

次回に詳しく書きたいと思います。

 

最後まで読んでくださった方

ありがとうございました。