娘と生きる不登校な時間

娘から笑顔が消えた。いじめ、不登校、精神崩壊、転校、リストカット、性犯罪。生きる意味に疑問をもつ娘に、自信と笑顔を与えたい。二人三脚で難関大学受験に挑むシングルマザーの記録。

┝08.気付けなかった便所飯 味方であるために捨てる大人の正論

 

三者面談で発覚した便所飯

 

ミノリが演じる嘘のミノリ

中学からの新しいスタート。

小学校時代の嫌な思い出なんて全て忘れて

もう誰に遠慮することもなく

自信を持ってミノリらしく

元気に楽しく過ごしていければいい!

 

それが叶う場所なはずで

そうやって過ごせているのだろうと

私は全く疑いもしていなかったので

 

便所飯(べんじょめし)

 

なんて・・・。

 

また私は

そんなミノリの状況を

全く気付いてあげられていませんでした。

 

 2学期が終わったばかりの三者面談で

初めて知ったミノリの今。

私は目を丸くしたままで

ミノリの横顔を見ていました。

 

(ミノリ) 

なんか、しんどいねん。

面白くもないことで笑ったり

何でも「そうそう!」って合わせたり

会話が途切れてシーンってなるのが怖くて

必死で話を作ったりとか

わざとふざけて笑わせてみたり…。

でも最近

時々プツッと電池が切れるみたいに

もう無理・・・

もう笑えないって思う時がある。

トイレの中で一人でいる時は

そういう無理をしなくていいから

落ち着くねん。

休憩したら

また笑えるようになるし…。

 

担任の先生は

ミノリのそんな訴えに

私と同じ気持ちで返してくれました。

 

(先生)

面白くない時は笑わなくていいんやで。

人に全部合わせる必要はないし

そんなん、しんどいに決まってる。

ミノリはミノリでいいんやで?

 

ミノリは首を横に降りました。

 

(ミノリ)

そんな事したら、友達いなくなる。

みんな、私は面白い子やと思ってるし

いつメンは

(いつも一緒にいる仲良しな友達のこと。)

「面白い私」がいるからこそ

集まってできたグループやから

今さらキャラ変えられへん。

 

(先生)

でもそのキャラは

本当のミノリじゃないんやろ?

これからもずっと無理して

自分じゃない自分を演じて過ごすのは

無理があると思うよ。

 

(ミノリ)

分かってる。分かってるけど

どうしようもないねん。

女子だけじゃなくて男子も

いつも笑ってる私のこと

「こいつは何やっても傷付かないヤツ」

って思ってるから

面白がってからかってきたりする。

期待どおり

笑ってツッコミ入れて返してるけど

本当は…すごい嫌やねん。

 

 (私)

嫌なことは嫌って伝えないと

わからんやん?

言えないんやったら

いっそ泣いてみるとか

態度で示してみるとかどうやろ?

 

(ミノリ)

そんなんして

その場が凍りつくのが嫌やねん。

だからつい期待通り返してしまう。

そんな自分もほんとは嫌やし

バカみたいな事ばっかりしてくる男子も

私に頼りっきりでずっと付いてくる

いつメンの子たちにも

最近はイライラしてしまうねん。

 

 

ある程度の人生経験を積み

様々な人と関わってきた

大人の私や先生にしたら

聞けば聞くほど

理解はできても同調することはできない

ミノリの主張でした。

 

だからつい

こうしたら?こう考えてみたら?

この方が正しくない?

など、正論をぶつけたくなります。

でも…

 

あ、だめだ!違う!

 

私はすぐに思い直しました。

 

13歳の正解に寄り添う

今ミノリに必要なのは

大人になったら分かる正論ではなく

今現在のミノリの場所

一緒に立って考えること。

 

絶対に大人の目線

答えを与えてはいけない!

 

私がこう思う背景には

育った環境にあると思っています。

 

私は、田舎の小さな町で

優しい両親に育てられました。

 

両親は、いつどんな時でも

私の考えや行動に一切口出しする事はなく

やろうとしていることや

悩みを相談したときには

決して自論を押し付けず

 

【正解のものさし】は

人それぞれなのだから

 

 と、私が思う正解

いつも寄り添って考えてくれる人でした。

 

今思えば

その教育・子育て方法は

大人への不満や反感を生み出すことがなく

味方なんだという信頼感こそ強くなり

 

今日に至るまでずっと

 

私がポジティブに生きてこられた

その土台になっていると思っています。

 

今こそ、ミノリにとって

私がそうであるべき時だ。

 

私は大人の正論

頭の中から消し去りました。

  

13歳のしんどさには

13歳なりの理由と正解があります。

 

その頃の自分はどうだった?

どんな事を分かってほしかった?

 

それを考えるために

 

私たち親世代が子どもの頃とは

世の中が変わっているんだという事

スマホとか、ゲームとか

当時には考えられなかったことが

当たり前になっている事実

 

まず認め

 

今ミノリが生きている世界に自分がいたら

何ができて、何をしたくて

何をして欲しくないと思うのか?

 

親世代の過去の栄光大人の正論

一度横に置いて

 

同じ目線で考え

同じ目線で話し合う事が

お互いにとって大事なのではないかなと

その時も、そして今も思います。

 

もちろんそれは

誰にでも当てはまることでは

ないかもしれません。

 

ただ、少なくともあの時のミノリには

ミノリの理由を理解し寄り添う味方

必要だったと思うし

結果、味方がいるという安心感

乗り越えられた出来事が

その先にもたくさんあったため

 

 

ミノリが大人に不信感を抱く前に

それに気付くことができて

本当によかったと思っています。

 

 

ミノリの話を聞いた担任の先生も

すぐに改善を促すつもりではなかった様子で

 

大人になるまでに

本当の自分らしさ

少しずつ出せるようになったらいいね

 

 という、ホッコリした雰囲気で

三者面談を終えて下さいました。

 

が、ミノリの便所飯は現実で

また3学期からもそれは続くはず。

ホッコリと先延ばしにしているわけにはいかず

帰宅後きちんと話し合うことにしました。

もちろん、13歳の正解に寄り添って。

  

 

校門を出る時

すれ違った親子がいました。

うつむき加減の細身の男の子と

そのお母さん。

 

ミノリがすれ違いざまに

『バイバイ』と小さな声で言ったので

 

あれ?友達?

と聞くと

 

 (ミノリ)

あの子、1学期の3日目ぐらいから

ずっと学校休んでるねん。

初めて声かけちゃった。

なんか私、いい事したって感じ!?

「新学期は学校においでね」とか

言ってあげればよかったかな。

 

と少し優越感に満ちた表情で言いました。

中1ですでに不登校かぁ。

せっかく合格して入った学校なのに

お母さんも心配だろうなぁ〜。

 

私とミノリは自分達のことを棚に上げ

上から目線でそう思いました。

 

後に自分がその立場になるとも思わず

そして、そんな風に見られる事が

何よりもツライと言う事も知らずに。

 

 

トラウマ克服作戦

帰宅後、私達は

早速話し合いました。

 

そもそもなぜ?

いつからミノリは

面白くもないことで笑ったり

何でも人に合わせたり

面白い子を演じたり

するようになってしまったのか?

 

少なくとも

たった8ヶ月前

小学6年生のあのツライ時期には

 

面白ければ笑い

面白くなければ笑わない。

もともと明るい子だけれど

わざと明るくしたりはしない。

つらければ泣き

嫌な時は嫌な顔ができて

 

人が何と言おうとも

自分のプライドに忠実

しっかり自分を出せる子だったはず。

 

私はここ数ヶ月のミノリの様子を

振り返りながら

確かめるようにミノリに言いました。

 

(私)

ほら、そういうミノリだからこそ

あの子(担任いじめの主犯格)の名前を

先生に聞かれた時にも

正義感から言ってしまって

いじめの・・・ターゲットに・・・

 

あっ!!

 

思わず出た私の声と同時に

ミノリが言いました。

 

(ミノリ)

だからやん・・・。

 

 

そう

ミノリはあの6年生の時の

いじめられた自分自身が

 

トラウマになってしまっていたのです。

 

 (ミノリ)

もうあんな事になりたくないねん。

無視されたり、独りぼっちになるのは

絶対に嫌!

だから私は最初から

いつも笑っている子

必ず場を盛り上げてくれる子

ひょうきんで、怒ったりしない子

っていう風に

キャラチェンしたんよ。

 

そうか、それで

演じる事に疲れた・・・と。

なるほど、そりゃ疲れるわ。

私は納得しました。

 

でも、そんなミノリに

本当の自分に戻せとは

言えません。

 

本当の自分では

またいじめられる

というトラウマがある限り。

 

だとしたら

疲れて便所飯にならないための

対策を練るしかない。

 

私はノートを取り出し

対策と書きました。

 

私たち親子は

話し合う時や考えをまとめる時に

紙に書き出す事が多々あります。

 

これは発達障害の兄、タクを育てるにあたり

聴覚だけでなく視覚でも伝えた方が

より伝わりやすく理解されやすい事が

経験として分かったため

タクには幼い頃からずっと

書きながら話すようにしていました。

 

それが意外と

タクだけでなく、ミノリや私にも

考えをまとめる場合などに効果的だと分かり

実は私は今も自分専用ノート

いつでも書けるように持ち歩いているし

ミノリも悩んだときなどには

紙に書いて考えることが定着しているようです。

(これ、オススメです!)

 

対策

学校では明るく元気なミノリで頑張る

(・・・しかない。)

      ↓

疲れて逃げたくなる前に

どうしたらいいか。

 ・保健室へ行く

・早退する

  

・・・あ、便所飯?

いや、便所飯はもうやめようよ〜

不潔極まりないわ!!!

なんてケタケタ笑いながら

なるべく明るく

決してミノリを責めない雰囲気

二人で考えていきました。

 

でも、他にできる対策が

何も思い浮かびません。

 

かといって

保健室へ行けば結局友達に心配をかけるし

早退だって頻繁にするわけにはいかない。

 

校内にはカウンセリングルームという名の

心がしんどくなった子どもたちが休めて

カウンセラーが常駐している部屋が

あるにはあるのですが

そこに行くというのは

「私学校に馴染めてません」

というイメージになるらしく

できれば避けたいようでした。

 

これはもう

学校以外でミノリが発散できる場所

 を探すしかないのでは?

 

それはすぐに頭に浮かびました。

 

カラオケだ!

 

ミノリは歌うことが大好きで

カラオケで何時間も

ひとりで歌い続けることで

ストレス発散になったことが

過去にもありました。

 

でも学校帰りには校則上行けないし

帰宅後は子どもだけでは

入れない時間帯になってしまいます。

 

それでも

 

(ミノリ) 

おお!それいいやん!

それなら学校でも

笑って頑張れるかもしれん!

 

そう目を輝かせて嬉しそうに言うので

 

(私) 

じゃあ学校から帰ってきたら

私がカラオケに何時間でも付き合うわ。

それまでは、頑張ってみよか?

 

というふうに流れ、決定しました。

 

中学生にもなった子と母子二人で

毎日のようにカラオケに行く

というのは

なかなかない光景かなとは思うのですが

本当に何もほかにいい案が浮かばなくて

 

まぁそれでミノリが頑張れるのであれば

とりあえず何でもやってみようか

という気持ちでいました。

 

 

心が軽くなったかのように

嬉しそうに笑うミノリの顔を見ながら

 

しょせんまだまだ子どもだな。

結構このまま簡単に解決できるかもしれない

 

なんて、思い始めた私。

 

 

でも

 

頑張る3学期・・・どころか

三者面談期間が終わった翌日の終業式の日

 

ミノリは登校したものの

 

学校のトイレから

出てきませんでした。

 

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ここからの事は

次回に詳しく書きたいと思います。

 

最後まで読んでくださった方

ありがとうございました