娘と生きる不登校な時間

娘から笑顔が消えた。いじめ、不登校、精神崩壊、転校、リストカット、性犯罪。生きる意味に疑問をもつ娘に、自信と笑顔を与えたい。二人三脚で難関大学受験に挑むシングルマザーの記録。

┝09.不登校の始まり 死にたいと初めて言った日

 

 

進めなくなった終業式の日の一歩

中学1年生2学期最後の登校日。

 

前日に発覚したミノリの

【便所飯】行動について

 

学校で頑張りすぎて疲れた日には

帰宅後、一緒に

カラオケに行って発散しよう!

 (それで少し心が楽になってくれたら…)

 

なんて

 

今思えば薄っぺらな対策を考えて

お弁当がいらない翌日の終業式の日には

そんな対策も不用だろうと

 

私はたかをくくっていました。

 

でも・・・

朝いつもどおり登校したはずのミノリは

教室には入れず

 

トイレに閉じこもり

そのトイレの中から

私にLINEをしてきました。

 

 

たった一言

 

『無理』

 

と・・・。

 

 

『えっ!?』

自宅で仕事の準備をしていた私は

思わず声をあげ

一瞬、頭が真っ白になりました。

 

そして、狭いトイレの中で

今、ミノリがひとりで

不安に怯えているんだと思うと

いても立ってもいられない気持ちになり

胸がギュッと締め付けられました。

 

焦って、パニックになりそうな気持ちを

私は必死で抑えながら返信しました。

 

(私) 

今どこ?

 

 (ミノリ)

トイレ

 

 (私)

誰かそれに気付いてる?

 

(ミノリ)

分からん。

登校してそのままトイレに入ったから。

 

 

(ああ・・・もう

すぐにでも飛んで行きたい!)

 

両手でスマホを真正面から握りしめ

こういう時、どう返すのがミノリにとって

一番いいのだろうと迷い考えている時

ミノリからのLINEが続きました。

 

 

(ミノリ)

もう無理。死にたい。

 

 

 この、死にたいという言葉。

 

実はこの先

何度も聞かされることになるので

今となっては

ミノリのHELPワードだと理解し

少しは冷静に対応することができるのですが

 

初めて聞いたこの日は

このままミノリが

本当に自殺してしまうのではないか、とか

止められなかったらどうしよう、とか

恐怖と後悔と辛さ

一気に押し寄せてきて

 

手が震え

涙が溢れて止まりませんでした。

 

私の人生においては

いや、もしかしたら私たち親世代にとっては

禁句に近い言葉ではないでしょうか。

簡単に口に出せる言葉ではありません。

一生言わない可能性の方が高いと思います。

 

でも、ミノリが発したその言葉に対して

 

「そんな事言うものじゃない」

叱ることも

 

「できるものならやってみなさい」

突き放すことも

 

「死なないで」と伝えることさえも

怖くて私にはできませんでした。

 

こんな時の親の正しい対応というのは

状況や、子ども達それぞれの性格によって

全く違うと思うし

そもそも正解があるのかどうかも

疑問です。

 

だから私がしている

ミノリに対する行動や言葉も

他の人にとって正しくは決してないし

共感し合える事でもないでしょう。

 

ただ、場面はそれぞれ違っても

大切な我が子の口からそんな言葉を聞き

戸惑い、自分を責めずにはいられない

あのなんともつらい無力感は

大なり小なり

同じなのではないかなと思います

 

 

でも、そんな親のつらさよりも

もっともっともーっと

その言葉を発する子どもたちは

つらい状況の真っ只中にいて

 

一度心の中にできてしまったその

簡単には取り除けないものなんだと

私はここをきっかけに

この先、何年もかけて

実感していくことになりました。

 

 

ミノリに会いたい

死にたい

 

その言葉にかなり動揺した私でしたが

それをミノリに悟られてはいけない

無意識に思いました。

ミノリが訴えてきた必死のHELP

親の私がアタフタしていては

どうしようもありません。

 

私は焦りを隠し

落ち着いて(いるかのように)

ミノリに返信しました。

 

(私)

OK、大丈夫やで、ミノリ。

そこまでよく頑張ったやん!

ちょっと時間かかるけど

お迎えに行こうか?

 

既読がつき

次の返信がくるまでのほんの数秒

とてもとても長く感じて

スマホを握り締める手が

冷たく汗ばんでいました。

 

(ミノリ)

 迎えに来て

 

 

はぁぁぁぁーーーーー

今度はまた種類の違う涙が溢れます。

 

(私)

了解!すぐ向かうわ!

とりあえず保健室にでも避難しとき。

 

ニッコリ笑ったスタンプをひとつ送信。

 

私はスマホを片手に持ったまま

焦りで、頭の中が整理できず

家の中を行ったり来たりしてしまいました。

 

一秒でも早く学校へ行きたい。

ミノリに会いたい。

 

学校までの最速は電車で1時間。

でも、疲れ切っているだろうミノリを

駅まで歩かせたり

他の生徒と同じ電車で帰らせたりは

したくありませんでした。

 

ペーパードライバーの私は

日々の節約には目をつぶり

レンタカーを借りることにしました。

もちろん仕事なんて後回しです。

 

高速道路を利用し学校へ到着できたのは

迎えに行くと返信してから

1時間半が経過していました。

 

途中ミノリから

保健室にいるとLINEがあったため 

私は早足でまっすぐ保健室へ向かいました。

 

小さくノックしドアを開けると

すぐ目の前の長椅子にミノリは座っていて

 

無事に会えたことに

腰がくだける思いでホッとしました。

 

現実は、ドラマのように

抱きしめたりはできないけれど

私はその思いをめいいっぱい込めて

ミノリの頭を軽くポンポンしました。

 

よく頑張った。

さ、帰ろ。

 

明るく言った私の声に頷き

ミノリは申し訳なさそうな顔をしたまま

立ち上がりました。

 

担任の先生はホームルーム中だったため

『帰宅後に連絡する』と保健の先生に伝え

とても静かな廊下を

ソォーッと隠れるように歩きながら

学校を出ました。

 

 

ミノリがダメなわけじゃない

車に乗ったとたん

ホッとしたように力を抜いて

うなだれたミノリ。

 

(私)

おなかすいてない?

 

(ミノリ)

 ・・・すいた。

のど乾いた。

 

きっとトイレの中で

たくさん泣いたんだろうなと分かるその顔。

私はコンビニに寄り

オニギリとお茶と

チョコレートを買いました。

 

助手席でそれを食べながら

少し落ち着いた様子のミノリ。

 

そして私は親として

聞かなければなりません。

帰宅してからでは

ダメだと思いました。

 

状況を知りたい、という気持ちと

ミノリの気持ちを

正しく把握しておかなければ

この後かける言葉や

今日のミノリに必要な言葉の選択

間違いが生じてしまうからです。

 

(私)

ところでさ

今日の朝、家を出るときは

いつもどおりだったん?

もうその時から、しんどかった?

 

思い返すように

ミノリは言いました。

 

 (ミノリ)

うーん。分からへん。

分からへんけど

電車に乗って、学校へ行こうとした時から

もうしんどかった気がする。

学校に着いて、教室へ行く前に

ちょっとだけトイレで落ち着こうと思ったら

出られなくなった。

ここを出た瞬間から笑ってないとダメや!

と思ったら、無理…って思った。

チャイムが鳴ってしまって

もし今から教室に行ったら

みんなに「どうしたん?」って聞かれて

一斉に視線が集まる…。

それがもう耐えられないって思った。

外に出ないと心配かけるって分かってたけど

出るのが怖くて

どうしたらいいか分からなくなって…

こんな馬鹿な私なんか

もう死んだ方がいいって思った。

 

(私)

ちょちょ、ちょっと待ってよ!

 

ミノリに教えてあげたい事が

考える間もなく

私の口から溢れてきました。

 

(私)

トイレから出られなくなった事は

そこまで悪い事じゃないよ。

学校っていう囲われた場所の中で

今のミノリにとって

トイレが一番安心できる場所なんやろ?

不安だったんなら

そこにいるのが正解やん!

 

世の中にはいろんな人がおる。

学校に行ける事が偉いわけではないし

行けない事が悪いわけじゃない。

友達がたくさんいる人が

いい人なわけではないし

友達がいなくても素敵な人は

いっぱいおるよ。

 

出来る事も出来ない事も

そのタイミング

みんなが同じはずがないし

同じにできない事が

ダメな事ではないんやで?

 

そりゃもちろん、大人になったら

他の人と足並み揃えて

合わさないとダメな場面が増えるよ?

けど大人はそれがお互いやから

どちらか片方だけが我慢するとか

傷付くっていうことは少なくなるねん。

まぁ、そのぶん

うわべだけの付き合いが増えるから

そこは残念なところやけどな。

 

でも、大人は学生と違って

いろんな意味で自由があるから

自分らしく生きられる場所を別に見つけて

ツライだけじゃないように

上手く生きていく事ができるんよ。

 

ミノリは同世代の子に比べたら

精神的に大人っぽいところがあるから

人の気持ちを先に察して

相手のために努力したり

我慢してあげたりするやろ?

でもまだ周りが中学生で子どもやから

一方通行で頑張るしかなくて

そこがしんどいんやと思う。

周りが大人になる頃には

自然に解決するような事かもしれんなぁ。

 

だからミノリが間違ってるとか

馬鹿とかじゃ

絶対にないねんで!

 

 

つい勢いで、思ったことを

長く語ってしまったけれど

結局、何ひとつ解決策は生み出せず

最後はこじつけみたいに

なってしまいました。

 

けれどミノリは私の話を

黙ってしっかりと聞いていてくれ

 

そして、解き放たれたように

イツメン(いつも一緒にいる仲間のこと)

ひとりひとりについての

普段言えない愚痴やエピソード

思っている事を話し始めました。

 

それは相談というよりも

声に出して言う事

自問自答し解決している感じで

 

運転しながら私は

ただ相槌をうちながら

聞いているだけでした。

 

ミノリの声を聞きながら

今、無事に隣にミノリがいることに

とにかくホッとして

もう二度と一人で戦わせるようなことは

させない!と心に誓いました。

 

 

夏休み明けの現実

翌日からの長い長い夏休みは

【便所飯】のことなんて

忘れてしまいそうなほど

何事もなく過ぎていきました。

 

ミノリの部屋から毎日のように

友達との楽しそうな電話の声が

聞こえてくることに安心し

 

可愛い水着を買って海へ泳ぎに行き

真っ黒に日焼けして

帰ってきたことに安心し

 

自宅に泊まりに来た友達と

ゲームをしながらお腹を抱えて

笑い転げている姿に安心し

 

うまく気持ちをリセットして

3学期はまた新たな気持ちで

始められそうだと

そう思っていました。

 

いよいよ始まる3学期。

前日の夜、制服の準備を整え

目覚まし時計のセットを確認。

あえて、気持ちを確かめることはせず

早めに寝なさいよとだけ声をかけて

就寝しました。

 

翌朝

ミノリを起こそうと部屋をのぞくと

すでに起きてベッドの中で

モゾモゾと動いていました。

 

(私)

おはよう。

そろそろ起きて準備するんやで。

朝ごはん作るわ。

 

(ミノリ)

…しんどい。

熱あるかも…。

 

 

驚いてミノリのおでこに

手をあてましたが

 

…冷たい。

 

(私)

熱はなさそうやけど

寝不足?

昨日きちんと寝た?

 

(ミノリ)

全然寝れなかった。

眠い…しんどい…。

休んだらダメ?

 

 

その瞬間、私の頭に浮かんだのは

トイレから出られなくなった

ミノリの姿でした。

 

 

(私)

いいよ、寝とき。

今日は休もう。

 

そう伝えて

私はミノリの部屋のドアを

そっと閉めました。

 

その時はまだ

今日だけの事だと思っていて

 

まさかこんなに急に始まるなんて

思ってもいませんでした。

 

不登校

 

ミノリは3学期から

学校へ行けなくなってしまいました。

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ここからの事は

次回に詳しく書きたいと思います。

 

最後まで読んでくださった方

ありがとうございました。