娘と生きる不登校な時間

娘から笑顔が消えた。いじめ、不登校、精神崩壊、転校、リストカット、性犯罪。生きる意味に疑問をもつ娘に、自信と笑顔を与えたい。二人三脚で難関大学受験に挑むシングルマザーの記録。

┝05.緊急保護者会 それぞれの主張と新たな決意

緊急保護者会のご案内

 

淡い期待とそれぞれの不安

ミノリと一緒に登校した日の夜

学級の連絡網が回ってきました。

 

明日の夜

6年3組の保護者会を行います。

突然のことでご都合が合わない方も

おられると思いますが

現在の学級の様子を

お伝えしたいと思いますので

可能な限りご参加ください。

 

そんな内容でした。

 

こんな突然の保護者会は初めてで

もう先生方も

切羽詰まった状況なんだなと感じました。

  

あの目の男の子の親は来るかな。

いったいどんな家庭なんだろう。

 

他の親御さんは今の状況

知っているんだろうか。

 

みんなどんなふうに

考えているんだろう。

 

まだ今日見た状況を

頭の中で整理できていないのに

また新たに行動すべき事が増え

 

何をどこから考えたらいいのか

何をどうすることが先決なのか

 

どんどん溢れる疑問や不安で

グチャグチャに混乱した気持ちのまま

 

必死で平静を装い

次の方へと連絡を回しました。

 

私は離婚後

フルタイムで仕事をしていたため

親同士のランチ会などの交流には

全く参加できなくて

 

結果、本音で相談し合える

ママ友はできませんでした。

 

だから、保護者会とはいえ

他の親御さんとお会いできる機会が

訪れたことには

淡い期待をしていました。

 

相談し合える人が

できたらいいな・・・なんて。

 

ミノリに

保護者会が開かれることを伝えると

とても複雑な表情で

 

大ごとになってしまっている原因

自分にあるのではないか

またこの事でいじめが

エスカレートしてしまうのではないか

 

そう、不安がりました。

 

だけどそれは違う。

 

私はミノリに説明しました。

 

まず、この原因を作ったのは

ミノリではなく

【学級崩壊】の状況を楽しんで

ずっと続けている子たちだし

 

これ以上

【学級崩壊】も【いじめ】も

エスカレートさせないために

話し合うのだから。

  

大人は、ミノリが想像している以上に

はるかに大きな力を持っているから

私たちが団結すれば必ず

被害者の子はもちろん

加害者の子だって守ることができるはず。

 

だからミノリは

安心していい。

 

私はそう伝えました。

そう伝えながら・・・

 

被害者側の気持ちと

加害者側の気持ち

そして教師という職上の立場や考えが

うまく一つの方向へまとまり

 

解決へ向けて団結できるだろうか

少し不安でもありました。

 

 

始まった緊張の保護者会 

翌日の夜

お仕事をしている方への配慮により

保護者会は20時より

6年3組の教室で開かれました。

 

私が行った時には

すでに数名の保護者が

教室のあちらこちらに集まっていて

 

深刻な表情の端々で

時折笑みも見られたりして

 

この珍しい緊急保護者会というものを

やや野次馬的に捉えている方も

いるように感じました。

 

私は目が合った方々に

小さめの声で挨拶をしながら

静かに教室の中に入りました。

 

そして

日頃の保護者会ではあり得ない

一番前の中央の席に座りました。

 

どんな些細な言葉も

絶対に聞き漏らさない!

そんな気持ちでした。

 

 

すると隣の席の椅子に手をかけ

 

『 ここいいですか?』

と声をかけられました。

 

見上げると、それは

昨日校長室のソファに座り

校長先生と話していた

あの女の子のお母さんでした。

 

あ、はい、どうぞどうぞ。

 

私がそう言ったのと同時に

廊下から先生方が入って来られました。

 

教頭先生を先頭に

校長先生、生徒指導の先生

担任の先生、学年主任の先生

と続き

 

教室の黒板の前に

こちら向きに並べられた椅子に

神妙な面持ちで腰掛けました。

 

その空気に流されるように

保護者も皆

ガタガタと生徒側の席に着席し

教室内は一瞬のうちに

シーンと静まりかえりました。

 

私は、後ろを振り向きませんでしたが

ほぼ全ての席が埋まっているような

重々しい空気感があり

女性だけでなく男性の姿も見られました。

 

まず最初に

生徒指導の先生が話し始めました。

 

本日はお忙しいなかご足労いただき

本当にありがとうございます。

今回、緊急に保護者会を開きましたのは

今6年3組で起こっている問題について

我々教師だけでなく

保護者の方々との連携をより強く持ち

共に解決していくことを

願ってのことであります。

貴重なお時間をいただき大変恐縮ですが

この機会に是非

保護者の皆様のご意見等を

頂戴できたらと思っております。

 

そして担任の先生と変わりました。

 

担任の先生は

20代後半の若い男の先生で

ミノリの学校に配属されてから5年目。

見た目は決して弱そうではなく

どちらかと言えば体育会系にも見え

昨年までのイメージでは

人気がある先生でした。

 

でも今

目の前に立っているその姿は

スーツの下のYシャツの裾

ウエストから少し外に飛び出していて

手を上げ下げするたびに

それがチラチラ見えてだらしない。

 

顔には血色がなく

目線を上げてこちらを見るけれど

目にも声にも力はありません。

 

全て私の力不足です!

全て私の責任です!

本当に申し訳ありません!

 

そう言い

深々と頭を下げた先生の手は

震えていました。

 

私たちは誰一人何も言わず

ただ静かに前を向いて座っていました。

 

 

挙げられないこぶし

再び生徒指導の先生から

現在のクラスの状況説明が始まりました。

 

・担任の先生の声は全て無視されている事

・授業中の立ち歩き、私語の多さ

・注意したときの生徒の反抗的な反応

ある生徒に対するいじめについて

・ヘルプ要員投入等の教師の対応策

 

そのうち

教師の対応策の説明はとても詳しく

学校側の頑張りを全面に出してきます。

 

その反面

 

ある生徒へのいじめについての説明は

 

無視や、からかい等があり

教室にいづらくなっている

生徒も出てきています。

 

と、本当にサラリと言って終わりました。

 

私はその話の間、一番前の席から

ずっと担任の先生だけを見続け

目でこう訴えていました。

 

これでいいの?

これで間違いないの?

それなら私は

黙っていない!

 

 学校側の説明が終わり

質疑応答になりました。

 

私は小心者なので

こういう場で発言出来るような

勇気は持ち合わせていません。

 

真実と、この場の意味との矛盾点

頭の中をぐるぐると回り続けているのに

 

発言するべきか

自分にそれができるのか

 

膝の上でグッとこぶしを握ったまま

手を挙げられず迷っていました。

 

 

 

一人の男性が手を上げました。

 

『あの~最近って、僕らの時代とは違って

注意の仕方にも色々と制限が

あるようですけど

僕はもう少し厳しく注意しても

いいと思うんですよね。

もし先生方が出来ないというのなら

僕たち親が交代で子ども達を毎日見に来て

しっかり注意するようにしても

いいんじゃないかと思います。』

 

数名の保護者の方々は

うんうんと頷きながら

その意見を聞いていました。

 

生徒指導の先生がそれに答えました。

 

『それは本当に助かります。

ありがとうございます。

どうぞいつでも学校に来ていただき

子ども達を一緒に見守ってください。』

 

・・・。

なんの具体性もない

マニュアルどおりの受け応え。

 

私は甘いな、と思いました。

 

だって私がミノリと登校した日

保護者の目があることを察知し

「監視~?」とニヤリと笑い

危険になるギリギリ手前のところで

うまく立ち回る

主犯格の姿がありました。

 

彼らは大人の考えなんて

見越している。

たとえ交代で保護者が見守っても

私たち母親のできることなんて

せいぜい我が子を守るのが精一杯でしょう。

それどころか

うまく交わせる優越感が

彼らをエスカレートさせるかもしれません。

 

でも

強面のお父さんたち

毎日教室に来てズラリと並び

その都度ガツーン‼

叱ってくれるなら

効き目はあるかも・・・笑

(ま、現実的ではありませんが。)

 

そんなことを想像しつつ

こういう場に参加し

自ら手を挙げ意見を言える

そんな父親っていいな

と、羨ましく思ったりして

 

握ったこぶしの力が

少しだけ緩んだ時でした。

 

主犯格の母の主張

次に手を上げたのは

女性。

 

『 あの…みなさん…

いつもご迷惑をおかけしていて

本当にすみません。

今…話にあった…その

注意される側

男子の母親です。

 

 え!!!

私は思わず振り返ってしまいました。

 

そのお母さんは

か細い声で続けました。

 

 『 色々と … その…

ご迷惑をおかけしていることは

知っているのですが

恥ずかしいことにもう

私の言うことも

聞いてはもらえません。

 

 さっきのその…  交代の見守りも

うちは母子家庭で

ずっと働いているので

私は交代できません…。

 

 なのでもし、うちの子が

何かご迷惑をかけたら

ご連絡ください。

あとでメールアドレスを

お配りしたいと思います。

本当にすみません!』

 

そう言って頭を下げ座ると

隣に座っていた女性が

肩をポンポンと

優しく撫でてあげていました。

 

一瞬、教室内がザワつきました

すぐに静かになりました。

 

私は今聞いた言葉を

頭の中で整理しながら

瞬きをすることも忘れるほどに

空中を睨んでいました。

 

 我が子に話を聞いてもらえない?

働いてるから交代できない?

困ったことはメールで教えてくれ?

 

母子家庭でか弱そうな姿を見せて

隣の女性にまで

よく頑張ったねと言わんばかりに

同情をかって

 

あなたそれ全部

間違っています!!

 

私は膝の上に置いていた手を

思いっきりグッと握り

それをゆっくりと広げながら

耳の横の高さぐらいまで

手を挙げました。

 

 

溢れ出した私の主張

怒りと緊張で、声も手も足も

恥ずかしいほどに震えました

 

机の端におなかをギュッと

押し当てて

震える手足を隠しながら

発言しました。

 

『 私はこの問題で

教室に入れなくなってしまった

女生徒の母親です。

◯◯と申します!

 

そう言ったとき

ずっと俯いていた担任の先生が 

顔を上げ私を見ました。

  

私は続けました。

 

『 実は昨日、私は

娘の現状を知るために

娘と一緒に登校して、クラスの様子を

見させていただきました。

 

先生がおっしゃっていたとおり

授業中であっても自由に立ち歩き

廊下にまで出て行く子もいます。

授業開始のとき

起立、礼と言っても誰もしません。

後ろを向いたまま

友達と話をし続けている子もいます。

 

それを注意しようものなら

うるさいと睨み反抗し

そんな光景を

笑って見ている女子もいます。

 

保護者の私が監視していたって

怖い先生がヘルプに来たって

状況は変わりません。

これが現実です。

 

からかわれ、脅され

教室に入れなくなった娘のことは

親である私が守ります。

だからみなさんも我が子の現実を

一度必ず学校に来て見てください。

 

それから先生方

大変なのは分かります。

一生懸命考えて下さっている事も

分かっています。

でもなぜ、駄目な事は駄目だと

自信を持ってハッキリと

叱らないんですか?

幼稚園児でもできるようなことさえ

させられず、注意しない理由って

何ですか?

 

溢れだす思い一気に言って

震えたままに、私は座りました。

 

そして目線を担任の先生に向け

その回答を目力で促しました。

 

 

 のに・・・

 

すかさず大きく手を挙げた

隣に座っていた

あの女の子のお母さん。

 

『 うちの子もいじめられています。

私も学校へ来て見ました。

うちの子は引っ込み思案だから

怖くても怖いって言えません。

だから先生方にしっかり

見ていてもらいたいです。

あ、もちろん私も協力しますし。 』

 

・・・むむ。

なんだか私の必死の訴えが

薄まった感が・・・。

 

この親にして、この子ありとは

よく言ったものだ。

そう思いながら私は

おかげ様で

平常心に戻っていきました。

 

 

それぞれの立場、それぞれの事情

 生徒指導の先生が答えました。

 

『 辛い思いをさせてしまっている

子ども達には、我々の力不足で

本当に申し訳なく思います。

学校全体で子ども達の安全を

守っていきたいと思います。

 

そして

注意の仕方が甘いのではないか

というご指摘についてですが

実は厳しく注意すると

反抗的な状況が加速し

手が付けられない状況になります。

 

そうなるとその後の授業にも支障が出て

きちんと授業を受けたい子どもにも

悪影響が出るために

厳しく注意することよりも

その都度、細かく指導していく方法を

取っております。

 

どうぞご理解いただけたら

ありがたくと思います。

 

そういえば

 

保健室の若い女性の先生が

ヘルプに入ったとき

反抗した男子は30㎝定規

その先生の頭を面白そうに

ポンポン叩いていました

それに対しても小声で『コラッ』

という程度だったので

私はその対応に

疑問しかなかったのですが

 

大きく叱れない状況になるまでに

様々な事があったのでしょう。

 

納得はできないけれど

昨日今日、現状を知っただけの私には

想像もできないような出来事が

こうなるまでにあったに違いありません。

仕事とはいえ

先生方もある意味、被害者なんですよね。

  

学校任せで

気付いても何もできない

しようとしない親

 

逆の立場でも

何もしないでいられますか?

そう聞いてみたいと思いました。

 

質疑応答が終わり

最後に担任の先生が前に立ちました。

 

『 卒業まで残り半年を切りました。

こんな状況のまま

卒業式を迎えて欲しくありません。

私は最後まで責任を持って子ども達と

過ごしていきます。

どうかよろしくお願いします。

本当に申し訳ありませんでした! 』

 

先生方全員で一礼し

並んで教室から出て行かれました。

 

あれ?

校長先生は

一言も話さないんだ。

 

不思議に思いましたが

今思えば

校長先生と担任の先生との間には

深い深い溝があったのでしょう。

 

過酷な現場で働く教師と

過去の武勇伝に浸る校長先生。

 

私は、もうたぶん

校長室に挨拶に行くことはない

そう思いながら、席を立ちました。

 

そこから手を引かせていただきます

校舎を出て校門に向かっていると

 遠くから一人の女性が走ってきました。

 

(あ!主犯格の男子のお母さんだ!)

 

『 ミノリちゃんのお母様ですよね?

息子がご迷惑をおかけして

本当にごめんなさい。

全然言うこときかなくって

私もどうしていいか・・・。

あ、これメールアドレスです。

何かあったらいつでも

メールしてくださいね。』

 

 

すでに力を使い果たした私は

何も言葉が浮かばず

 笑えない目で微笑みながら

そのメモをもらい会釈して帰りました。

  

ミノリを

安心させてあげられる報告

相談し合えるママ友

何ひとつ手に入れられず

 

理想どおりにはいかない現実に

世の中そんなに甘くないな

どこか吹っ切れた気持ちで

フッと笑えてきて

  

もう、遠回りはやめよう。

 

【学級崩壊】をなくそうとか

【いじめ】をやめさせようとか

 

そこから私は

手を引くことに決めました。

 

小学校生活残り半年。

こんな状況で、私なんかが

何かを変えられるはずがない。

 

もういいよ、ミノリ。

私もミノリも

無駄な選択はもうやめよう。

 

ここからは

ミノリが今この瞬間に

笑顔で生きるためだけ

選択をしていこう

  

小学校は義務教育だけど

笑えない場所に

行く必要は全くない

 

ミノリ6年生の秋。

年が明ければ中学受験の

はじまりです。

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 ここからの事は

次回に詳しく書きたいと思います。

 

最後まで読んでくださった方

ありがとうございました。